クレーンで荷をつり上げる際、ワイヤーを垂直(0°)に張ることは稀で、多くの場合は「2点吊り」や「4点吊り」のように角度がつきます。このとき、ワイヤーには荷物の重さ以上の負荷(張力)がかかっています。
この計算を疎かにすると、ワイヤーの切断やフックの破損を招きます。
1. 吊り角度による張力の変化
ワイヤー1本にかかる張力は、吊り角度(2本のワイヤーがなす角)が大きくなるほど急激に増加します。
- 吊り角度 0°(垂直):1本当たりの張力 = 荷重 ÷ 2
- 吊り角度 60°:1本当たりの張力 = 荷重 ÷ 1.73(垂直時の約1.16倍)
- 吊り角度 90°:1本当たりの張力 = 荷重 ÷ 1.41(垂直時の約1.41倍)
- 吊り角度 120°:1本当たりの張力 = 荷重 ÷ 1(垂直時の2倍、つまり片側に全荷重がかかるのと同じ)
現場では、安全のために「吊り角度は60°以内」に抑えるのが鉄則です。90°を超えると、ワイヤーにかかる負担が加速度的に増えるため、非常に危険です。
2. ワイヤーの「モード係数」と安全荷重
ワイヤーの選定には、そのワイヤー自体が持つ「破断荷重」だけでなく、どういう掛け方をするかによる「モード係数」を掛け合わせる必要があります。
- 目吊り(ストレート):係数 1.0
- あだ巻き吊り:係数 2.0(2本分以上の強度は出ないため)
- 半掛け(チョーク吊り):係数 0.8(ワイヤーが鋭角に曲がるため、強度が2割落ちる)
計算例: 3トンの荷物を、吊り角度60°の2点吊りで揚げる場合 1本当たりの張力 = 3トン ÷ 1.73 = 約1.74トン ここに安全率(通常5倍以上)を考慮し、使用荷重2トン以上のワイヤーを選定します。
3. 重心の位置と不等辺つり
荷物の形状が左右非対称で重心が偏っている場合、ワイヤーにかかる負荷は均等ではありません。
- 重心に近い方のワイヤー:より大きな荷重がかかる
- 重心から遠い方のワイヤー:荷重は軽くなるが、荷が傾く原因になる
重心がズレている場合は、レバーブロック等でワイヤーの長さを微調整し、フックが常に重心の真上に来るように「地切(じぎり)」の瞬間に細心の注意を払う必要があります。
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