天井クレーンに搭載されている**「過負荷防止装置(オーバーロードリミッター)」は、クレーンの安全性を守る上で最も重要な装置の一つです。これは、クレーンが定格荷重(安全に吊り上げられる最大荷重)**を超過した荷物を吊り上げようとした際に、自動的に巻上げを停止させるための保安装置です。
この装置が正確に機能しなければ、クレーンは設計上の限界を超えた負荷にさらされ、構造の破壊や大事故、さらには人命に関わる重大な災害に直結します。
私たち有限会社甲新クレーンは、天井クレーンのスペシャリストとして、過負荷防止装置の仕組みと、その適切な点検・調整の重要性を解説します。
1. なぜ「過負荷」がクレーンにとって致命的なのか?
クレーンの構造体(ガーダー、トロリ、走行フレームなど)は、定められた定格荷重に耐えるように設計・製造されています。過負荷状態が発生すると、以下のような深刻な危険が生じます。
- 構造体の変形・座屈: 設計強度を超えた力が加わることで、金属疲労が一気に進行し、ガーダーがたわんだり、柱状の部材が曲がったり(座屈)します。一度変形したクレーンは、修理しても元の強度には戻らないことが多く、使用を継続できなくなる可能性があります。
- ブレーキの機能不全: 過負荷状態では、巻上げ用モーターのブレーキにも設計以上の制動力が求められます。ブレーキが耐えきれずに滑ったり、焼き付いたりすることで、荷物を保持できなくなり落下するリスクが高まります。
- ワイヤーロープの破断: 荷重が過大になることで、ワイヤーロープにかかる張力が許容限界を超え、瞬時に破断し、荷物が制御不能な状態で落下します。
2. 過負荷防止装置の仕組みと種類
過負荷防止装置は、クレーンの荷重を感知する仕組みにより、主に以下の種類があります。
- ロードセル方式(電気式): ワイヤーロープや軸受にかかる張力や荷重を、ロードセルというセンサーで電気信号に変換し、正確に測定する方式です。最も精度が高く、最新のクレーンに広く採用されています。
- 荷重スイッチ方式(機械式): 主にホイスト(巻上げ機)に内蔵されており、ワイヤーロープの張力が一定以上になると、機械的なバネや接点が作動して電源を遮断する方式です。
装置の種類にかかわらず、その役割は**「定格荷重の110%以下の設定値で巻上げを停止させること」**です。
3. 法定点検における「過負荷試験」の重要性
過負荷防止装置は、その性質上、日常的に作動させる機会が少ないため、定期的な試験による動作確認が必須です。
- 点検時期: クレーン落成検査時および年次の定期自主検査時
- 試験内容: クレーンに定格荷重を超える荷重(一般的に定格荷重の1.1倍〜1.25倍)を故意に吊り上げさせ、装置が正常に巻上げを停止させるかを確認します。
- 調整: 停止設定値に誤差が生じていた場合、ロードセルやリミットスイッチの設定を正確に再調整します。
過負荷防止装置の正確な作動は、クレーンの使用上の安全を保証する「最後の砦」です。定期的な点検と調整を確実に実施し、クレーンを常に安全な状態に保つことが、事業者の重要な責務となります。

