
工場や倉庫で重い荷物を運ぶ天井クレーンは、日々の業務に欠かせない存在です。しかし、その便利さの裏には、常に安全への配慮が求められます。
「定期検査をしているから大丈夫だろう」と思われがちですが、実は、毎日の作業前に行う**「日常点検」**が、重大事故を防ぐための最初の、そして最も重要なステップであることをご存じでしょうか?
今回は、天井クレーンの日常点検がなぜ必要なのか、その重要性と、見落としがちなポイントについて解説します。
日常点検は法律で義務付けられている!
天井クレーンの日常点検は、単なる推奨事項ではありません。労働安全衛生法に基づく**「クレーン等安全規則」第36条**において、以下のように明確に義務付けられています。
【クレーン等安全規則 第36条(作業開始前の点検)】 「事業者は、クレーンを用いて作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、点検を行なわなければならない。」
この条文が示す通り、クレーンを使用する事業者は、毎日作業を開始する前に必ず点検を実施する義務があります。これは、年次や月次の定期自主検査とは別に、日々行うべき基本的な安全管理なのです。
なぜ「毎日」の点検が必要なのか?
では、なぜそこまで頻繁に点検を行う必要があるのでしょうか?その理由は、クレーンの状態が日々変化する可能性があるからです。
- 突発的な故障や異常の早期発見: クレーンは機械であり、部品の摩耗や緩み、電気系統の接触不良など、突発的な故障や異常が発生することがあります。日常点検を行うことで、これらの異常を早期に発見し、大きな事故につながる前に対応することができます。
- 小さな異変が重大事故に繋がるリスクの回避: 「少し異音がする」「動きがいつもと違う」といった小さな異変が、実は重大な故障の前兆であることがあります。日常点検でこれらのサインに気づくことで、事故を未然に防ぐことができます。
- 作業者の安全意識の向上: 日常的にクレーンの状態を確認することで、作業者自身の安全意識が高まります。クレーンの構造や機能への理解が深まり、より安全な操作に繋がります。
- 定期検査では見つけにくい変化の察知: 年次や月次の定期検査は、専門家による詳細な検査ですが、その間にもクレーンの状態は変化します。日常点検は、その間の変化をタイムリーに察知し、異常があればすぐに専門家へ報告するきっかけとなります。
日常点検でチェックすべき主なポイント
日常点検では、主に目視や聴覚、触覚を使って、クレーンの基本的な動作や安全装置の確認を行います。
- ワイヤーロープ・吊りチェーン:
- 素線切れ、キンク(よじれ)、腐食、摩耗がないか
- フックやシャックルなどの吊り具に変形や損傷がないか
- ブレーキ・クラッチ:
- ブレーキの効き具合が正常か
- クラッチの接続・切断がスムーズか
- 過巻防止装置・過負荷警報装置:
- 安全装置が正常に作動するか(作動テスト)
- 警報装置が正常に鳴るか
- 配線・集電装置:
- 配線に損傷や被覆の剥がれがないか
- 集電装置に異常がないか
- 走行・横行・昇降動作:
- 異音や異常な振動がないか
- スムーズに動くか、ガタつきがないか
- 操作装置(コントローラーなど):
- ボタンやレバーの操作に異常がないか
- 緊急停止ボタンが正常に作動するか
これらの点検項目は、クレーン等安全規則の「月次定期自主検査」の項目にも含まれる基本的な内容です。日々の確認を習慣化することで、クレーンの異常を早期に発見し、安全な作業環境を維持することができます。
まとめ:日常点検は「命を守る」ための習慣
天井クレーンの日常点検は、単なるルーティンワークではありません。それは、そこで働く人々の命を守り、企業の安全な事業活動を支えるための重要な習慣です。
「たかが日常点検」と軽視せず、毎日の作業開始前に必ず実施することで、突発的な事故のリスクを大幅に減らすことができます。
有限会社甲新クレーンでは、クレーンの荷重試験用ウェイトのレンタルを通じて、お客様の安全な設備運用をサポートしています。日常点検で発見された異常への対応や、より専門的な点検・メンテナンスに関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

